犬 の 詫 び 状

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166.ちょっと待ってて
ちょっと待ってて


 暑い暑い日が続いて、

でも、ご飯もしっかり食べていたし、
自力では立ち上がれなくなったとはいえ、毎日、朝晩、抱っこして外に出してやって、
サポートしてやりながらほんの少し歩いて、
しっかりトイレは全部外で済ませていたし。

介護と言える程の介護も無く、
これならまだまだ大丈夫、この暑ささえ乗り切れば安心。
頑張れば、ひょっとしてもう一年も。。。

なんて、思っていました。


それにしても、今年の暑さはすごくて、
なんとか少しでも涼しくならないものか、
明日は今日より涼しくなるだろうか?
明後日になれば?明々後日になれば?

なんて思っていました。



でも、老犬にはとても辛い夏だったようです。


ご飯を食べなくなった、と思ったら、あっけなく逝ってしまいました。


16歳と4ヶ月ちょっと、犬としてはとても長生きだったのだろうし、
いつ何があっても不思議じゃない、と頭では理解していたけれども、

つい数日前まではご飯も普通に食べていたし、
その日の朝も外でトイレを済ませていたし、

まだまだ大丈夫、と信じ込んでいたうかつな飼い主にとっては、突然の出来事で、
今でもまだ、受け入れる事が出来ません。

一緒に暮らした時間が長すぎて、
べったり一緒に過ごした時間が長すぎて、
いつも一緒に居るのが当たり前になってしまっていて、

いない状況にどうしても慣れません。

どこか、家の中の見えない所に、隠れているんじゃないか、と思ってしまいます。


でも、散歩の時間になっても、期待した目で見つめるやつはいないし、
ご飯の時間になっても、じっと見つめられて催促される事がありません。

冷凍庫には、だっちゃんのご飯がぎっしり残りました。
電子レンジにかければすぐ食べらるご飯が何日分も。
半製品、お肉、煮た野菜、などなどたくさん。

まだまだ食べると思っていたから、
まだまだストックしておかなければ、と思っていたから、

どうにも未だに納得出来ずにいます。



まだまだ大丈夫と信じ込んでいたから、
最後の数日、ピーピー、泣いていた時に、暑い暑い、と言ってるんだろう、とばかり思ってしまって、
「夏は暑くて当たり前、クーラーもついてるし、一番涼しい所に居るんだから、我慢しなさい!」
と怒ってしまった。

ほんとは、暑いだけじゃなくて、体が辛かったんだろうな、と後になって気が付きました。
辛い時に怒られて、それ以上頑張る気持ちが無くなっちゃったのかもしれない、

「体が辛いのに、怒ってばっかり。じゃあもういいよ、だっちゃん、もういいよ。」って気力が無くなったのかも。

最後まで怒られて、可哀想なだっちゃん。
なんで怒ってしまったんだろう、優しくしてたら、今まだ居たのかも。
どうしても考えてしまいます。


鈍感な飼い主が、これは単なる暑さ負けじゃない、また頸椎の調子が悪いのかも、と、やっと気が付いて、
整形外科が専門の動物病院を探して、連れて行こうと思ったその日に、
あっさり逝ってしまいました。
もう病院は行きたくないよ、と言わんばかりに。


前々から思っていました。
最後が近くなったら、べたべたして過ごそう。ずっとべたべたして過ごそう、と。
なのに、あっけない終わりでした。

3日前、あまりにピーピー言うので、
膝の上に抱き上げて撫でてやっていたら、すーっと寝てしまいました。
そのまま抱いているには、暑すぎたし、
あまりに穏やかに寝てたので、このまま少しでもぐっすり寝て体力がつくように、
そっとおろしたのだけど、
あのまま、ずっと抱いていれば良かった。
あの後すぐ終わりの時が来ると知っていたら、絶対におろさなかったのに。


今までは、「出来るだけの事はしてやったし、我が犬生に一遍の悔い無し。だよ、きっと。」」
なんて思っていたけれど、
人間達は、後悔ばかりです。



最後は、きっと苦しまなかっただろうと、言われたけど、
穏やかな綺麗な顔で、寝てるだけのようだったけど、
すぐにでも目を開けて笑いかけそうだったけど、

今年はアトピーが酷くならなくて、
顔も体もハゲハゲにならなくて、綺麗なふかふかの毛でおくってやれて良かった。
それだけが救いですが。



だっちゃんが逝ってから、ふとした拍子に、
いつものところで伏せてるだっちゃんが見えました。

なんだ、ちゃんと居るわ。と思って見直すと、居ない。

そんな事が、何度かありました。

夢で、いつもと同じに過ごしていて、
あー、良かった、いつもと同じだ、ちゃんと居る、
と思って目が覚めたら、からっぽです。


でも、きっと、いつも一緒に居るよ、と言ってくれてるんだと思います。

「千の風」という唄が流行っていたけど、
だっちゃんはきっと、千の風に乗って、どこへも行かない。行くわけ無い。
ずっと家に、私達と一緒にいるんだと思っています。



あんなに活発な好奇心強い性格なのに、
散歩でも遠くまで歩いて行けなくなって、
ドライブを楽しむには暑すぎる季節で、
毎日家に閉じこもって、朝晩の少しの散歩では、好奇心を満たす事件も少なく、

プライド高く自立心旺盛な性格なのに、
撫でられたり、拘束されるのが大嫌いな犬なのに、
体が思うように動かせなくなってからは、人間に頼る部分が多くなって、
自分でもはがゆく面白くなかっただろうと思う。

でも、それでも、毎日、朝晩、抱っこして外に出してやって、
体を支えてやると、律儀にしっかりトイレを済ませてくれた。

前は、撫でたり抱っこしたりすると、ちょっとはつき合ってくれるけど、
しばらくしたら、「もういいでしょ!」とばかりに逃げてしまっていたから、

最後の二月ほどの朝晩の抱っこは、だっちゃんの思いやりだったのかな、
我慢して抱かせてくれてたのかな、なんて思います。

抱っこしてる時、体を支えている時、
ふかふかの毛皮に顔を埋めると、愛おしくて、この状態がずっとずっと続いて欲しかった。
まだまだ続くと信じこんでいました。




だっちゃんと過ごした時間、ほんとうに、楽しい、幸せな時間でした。

犬の事をほとんど知らなかった私達に、色々な事を教えてくれました。

犬にも、感情やプライドや、目的、目標、達成感、がしっかりある事、
何かを一緒にするのがなにより嬉しい事。
この群れのメンバーである事をとても大切にして、自分も役割を見つけ果たそうと思っている事。
みんな一緒が、なにより大事な事。


そして、暮らしを楽しむ事を、たくさん教えてくれました。

散歩しながら、ご近所付き合いを教えてくれて、
あちこちの公園に連れて行ってくれて、
犬友達との付き合い方を教えてくれました。

あちこち足を延ばし、知らない道を教えてくれて、
だっちゃんが居なかったら、絶対に知らなかっただろうお店も商店街も教えてくれました。
あちこちで可愛がって貰って、おなじみのお店もいっぱい出来ました。

それまで、カメラを持つ事も無かったのに、
だっちゃんを写すために、カメラを買い、少しでも綺麗に写したいと、色々考えたり調べたり、

山に行くなんて、思いもしなかった私達に、
山歩きの楽しさを教えてくれました。

花にも全く興味が無かったのに、
公園での散歩で、色々な花を教えてくれて、山を歩きながら、花を写す事を教えてくれました。

だっちゃんが居なかったら、考えられない事ばかり、です。
暮らしを楽しむ事をたくさん教えてくれました。


だっちゃんが教えてくれた山を歩く楽しさだから、
だっちゃんが大好きだった季節になったら、冬の前の、寒い季節になったら、
だっちゃんが大好きだった山に行こうと思っていたけど、

あちこちの木が色づき、いつもの年なら、だっちゃんが張り切り出す季節になってみると、
だっちゃんがいません。
だっちゃんの居ない寂しさが、いっそう堪えます。

山に行ったとしても、きっと、
登り初めの苦しい時に、引っ張ってくれるやつがいないと、
すぐイヤになってしまう。
張り切って先頭で登るやつが居ないと、とても寂しい山歩きになる。
先頭で進んでは、振り返り、振り返り、みんな居るのを確認しては、
「早くおいでよー!」って励ましてくれるやつがないないと、
歩くのがイヤになる。
疲れて遅れがちになると、ねえ、もう少しだから、頑張って歩こう、もう少しで頂上だよ、って励ましてくれるうやつが居ないと、
きっと、頂上までたどり着けない。

ようやく頂上にたどり着いたとしても、満足そうに景色を眺めるだっちゃんの姿が無いと、
綺麗な景色も、色あせてしまう。


それでも、だっちゃんが教えてくれた歩く楽しさだから、
いつか、冬の初めの、晴れて寒い日に、だっちゃんの大好きだった季節に、
歩いてみようと思います。




だっちゃんは一足先に、逝ってしまったけど
そう長くは待たせないと思うから、

あっちの世界には、幼なじみの犬友達もいっぱいいるし、
ネットの友達わんこもいっぱいいるし、

あっちとこっちを行き来しながら、

今までと同じに、

散歩の時間を待ってたように、
ご飯の時間を待ってたように、
用事を済ますのを待ってたように、

山でみんなが追いついて来るのを待ってたように、


いつもと同じに、



「ちょっと待ってて。」



いつも先頭で、振り返り振り返り、みんながちゃんとついて来てるか確認しながら進んでいました。
「ちょっと待って!早すぎ!」と、私はいつも文句を言っていました。


あちこちの山で、振り返り、振り返り、

そして、あちこちの山で、下界を眺めてただっちゃん。
犬も景色を眺めて楽しむなんて知らなかった。
だっちゃんを案じて下さっていた皆様、ありがとうございました。
なかなかご報告出来ずにすみませんでした。
だっちゃんを思って下さるお気持ち、いつもありがたく思っております。

だっちゃんにお花を贈って下さった皆様、ありがとうございました。
綺麗なお花に囲まれているだっちゃんをながめていると、ほんとうに慰めらて、
改めて、お花の力を知りました。

そして優しい言葉をかけて下さった皆様、ありがとうございました。
ひとつひとつの言葉が心にしみこみました。


だっちゃんが逝ってから毎日、残されたたくさんの写真を見ています。
毎日見てるけど、まだ全部見終わりません。


アトピーで痒くてハゲハゲの期間も多かったけど、
最期の数ヶ月は、ハゲも無く綺麗な毛になっていました。
最後は綺麗なふかふかの毛皮で送ってやれて、本当に良かったと思います。
ふかふかの毛で眠るように安らかな顔でした。
今にも、うーん、って伸びをしそうでした。
最後の顔が可愛い顔だったのが、少し救いになってます。



じっとお願いの目、期待いっぱいの遊びに誘う目、
もっと遠くへ行こうと訴える目、何かを思いついたいたずらっぽい目、
鳩叩き成功の後で得意そうに振り返った時の目、
ドジった時に笑うとムッとした目、もう帰ろうと言うと不満そうな目、
嬉しいよ、楽しいね、って言ってる目、
いろんな目でこちらの顔を見上げていただっちゃん(都合の悪い時は、目をそらしてたけど)

いつも、その視線の先にいれた事は、とてもとても、幸せな事でした。




この笑顔でいつも、

「楽しいねっ?!」
「気持ちいいねっ?!」

と言ってました。


2週間ほど前、まだまだ元気だった頃。
まだまだ一緒に居られると信じていた頃。
あんなあっけなく居なくなってしまうなんて思いもしなかった頃。


一足先に行ってしまったけど、また会える日まで、
ちょっと待っててね。



山口百恵さんの、「さよならの向こう側」を聞くと泣けてきます。

著作権の問題があるのは重々承知していますが、
少しの間、ここに貼らせて貰います。






歌詞がほんとにそのままで、泣けてしまいます。




未だに気持ちの整理がつかないままに、長々と書いてしまいましたが。
お付き合い下さり、ありがとうございました。

長い間、だっちゃんを応援して下さってありがとうございました。
とても楽しい時間を過ごせましたこと、感謝しております。

だっちゃんのサイトをどうするか、とても悩みましたが、
やっぱり、ここは、だっちゃんが生きた一時期の記録だから、
もう少し、このまま置いておこうと思います。

もう過疎地のサイトですし、家族が思い出に浸るサイトみたいなものですので、
運悪くここを開いてしまった方も、読み捨てて下さったら、と思います。




わんこみんなが幸せでありますように。

幸せの形は、家族それぞれ違うけれども、
わんこと飼い主のみんなが幸せでありますように。

そして、まだ幸せにめぐりあっていないわんこも、幸せにめぐりあえますように。
家族を待ってるワンコ達が、たくさん居ます。
そんなわんこの事も、思い出して下されば。
そして、幸せを少し分けて下されば。


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2010/12/28 da-chan's oyabun

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