犬の詫び状ロゴ


だっちゃんの恋い     2002/12/28


初恋


本当に、きれいで格好良かった
だっちゃんが、まだ公園デビューして間が無い頃、かっこいい公園のボスに一目惚れした。
だっちゃんより、ちょっと大きい子犬のMちゃんと、プロレスして遊んでたら、ボスのEちゃんが、目の前を、ゆっくり走ったんだ。

きれいで、かっこよくて、思わず、遊ぶのを忘れて、Mちゃんと並んでお座りして見とれたんだよ。
Eちゃんは、ロックスターと、宝塚を併せたような、かっこよさ。大きくて、強い、すごくもてる。喧嘩も負けない。

それ以来、猛烈にアタックしたけど、Eちゃんは、「ガキの相手なんか出来るか」って、てんで、相手にしてくれなかった。挨拶もしてくれなっかったんだよ。
Eちゃんのおばちゃんや、おじちゃんは、だっちゃんをかわいがってくれたから、そばに行っても、そっぽ向いてる。

だっちゃんが、すぐ側に近づくと、うるさいって怒る。
でも、めげなかった。だって、本当に格好良かったんだもん。



ネェネェ、あのね・・・

犬の一念岩をも通す

 子供の間は、ずっとEちゃんに嫌われていたけど、めげず、アタックし続けた。
Eちゃんはとても、雌にもてたから、Eちゃんの周りは、雌がいっぱいいた。
そこで、少し大人になってきた、だっちゃんは、ひとりづつ、
「だっちゃんの方が強いんだから、あんた遠慮しな!」って言ってったんだ。

それに、だっちゃんが、半年たって、大きくなってきたら、だっちゃんが、強いし、
気も合うって、Eちゃんに、わかってもらえたんだ。
なにごとも、あきらめなければ、道は開けるもんだね。

それからは、ラブラブになって、だっちゃんが一番ってなったんだ。
毎日のように、早朝デートしたよ。
だっちゃんと、Eちゃんが連れだってると、怖い物なしだったよ。
時には、夕方にも、偶然会うと、デートを楽しめた。
あの頃は、本当に一番いい時だった。
だっちゃんの黄金の日々だね。

だっちゃんとEちゃんが、ラブラブだったから、だっちゃんのシーズンの時は
とっても困ったんだって。こんなに、ラブラブだけど、生まれてくる子犬のことを思うと・・・って。
だっちゃんは、秋田犬だけど、Eちゃんは、秋田とは、似ても似つかぬ、格好いい犬種だった。
すらりスマートな。どう考えても、間に生まれる子犬の想像もつかないって感じ。
そんなへんてこな子犬が生まれたら、もらい手なんて絶対無いし、
だっちゃん、Eちゃんは、気も強いから、その子犬は飼うのは大変だよね。

だから、思いは遂げられなかったけど、ずっと、何年もお互いにラブラブで一緒にいれたから、
犬としては、とても幸せだったって思ってる。



Eちゃんの晩年


Eちゃんは、大型犬だし、その中でも、寿命が短いといわれてる犬種だった。
だっちゃんと、出会った時は、もう壮年だったから、何年かしたら、
夏になるたびに、Eちゃんは、お腹を壊し、衰えて行った。
でも、寒くなるとまた、元気になったけどね。
それでも、やっぱり、「Eちゃん命」は変わらない。
犬のほうが、一途だよね。

デートの時も、Eちゃんのペースで歩いてたよ。
だっちゃんが一人で散歩してたら、時々、道ばたで一休みしてるEちゃんに出会った。
だんだん体が衰えてきたけど、気分は昔のままで、遠くまで、行っちゃうんだって。
行くのはいいけど、途中でくたびれて動かなくなってしまうって。
「だっちゃんが来たから、これで帰れる。」っておじちゃんや、おあばちゃんに喜ばれた。
で、Eちゃんと一緒に、Eちゃんちまで、連れだって帰るんだよ。

最初は、夏だけだったのが、冬もそうなって、夏はあまり出歩けなくなった。
でも、もうちょっとで、夏も終わるし、夏さえ終わればまた、元気になるかなぁって
思ってたんだ。

夏も終わりそうな、ある日、お見舞いに行ったんだよ。
Eちゃんが、出てきて、すっごく喜んでくれた。
「ずっと元気なかったのに、だっちゃんが来たらすごく元気そうにして、すごい喜んでる」って、
おばちゃんもびっくりしてた。
だっちゃんもすごくうれしくて、また一緒に散歩しようねって言ったんだよ。

ずいぶん元気そうに見えたから、これなら、また涼しくなれば、元気になるねって、
親分も大家分も喜んで、一安心したんだ。
二人とも、Eちゃんが大好きだったから。



旅立ち


次の次の日、Eちゃんは、旅立ってしまった。
お通夜に、みんなで行ったよ。

おうちに入れて貰えるのがうれしくて、張り切って入った。
リビングルームにはいったら、Eちゃんが寝ていた。
そばに行って、鼻をつけて、「どうしたの? だっちゃん来たよ、Eちゃん起きて」って言ったけど、
Eちゃんは、返事をしてくれなかった。
しっぽを振ってくれない。うれしそうな顔をしてくれない。
だっちゃんは、悲しくなって、ヒーヒーヒーって泣いちゃったよ。
大親分にだっこして貰って、ヒーヒー泣いてた。

だっちゃんにわかったんだ。Eちゃんは、旅立ちゃったって。
だっちゃんをおいて行っちゃったって。
「やっぱり、ちゃんとわかるのね。」ってみんな言ってたけど、あたりまえだよね。

あの日、だっちゃんに、お別れ言ってたのかなぁ。
しばらく会えなくなるよって・・・・
最後に会えて良かったけど、本当はもっと、もっと一緒に歩きたかった。


一人になって


Eちゃんがもういないってわかってたけど、散歩の時にやっぱり期待しちゃう。
途中で会えるかなって。あの角曲がったら、Eちゃんがいるかなとか。

しばらく、気落ちしてたよ。
ほかの犬にほとんど興味が無くなって、数少ない昔からの友達がいるだけ。
完全に忘れるなんて出来ないね。
犬って一途なのかな。
人間も見習ったほうがいいかもね。

向こうでは、また、Eちゃんは、もててるのかなぁ。
女の子に取り囲まれて、幸せにしてるのかな。
だっちゃんのいないうちにって、羽のばしてるのかな。
ちょっとくやしいかも。
だっちゃんもそっちに行ったら、また、周りの子たちを追い払わないといけないね。

でも、だっちゃんは、まだ元気だし、なかなかあっちに行けないしなぁ。
それに、うちの人たちが寂しがるしね。もっともっといてやらないと。




2代目


Eちゃんがいなくなって、寂しくてたまらない、おじちゃん、おばちゃんちに、
2代目のRちゃんが来た。

子犬の時、会いに行った。子犬のにおいと一緒に、なんだかEちゃんと同じようなにおいがして、
嬉しくなった。仲良くなればいいねってみんな言った。

Rちゃんが子犬の間は良かったけど、おおきくなったら、紛らわしいの。
向こうから、Rちゃんがやってくると、思わず、Eちゃんが来たって思っちゃう。
で、近づいたら、Rちゃんなんで、なんだか腹が立っちゃうんだよね。
「勝手に期待して、勝手に怒るな」って怒られるけど。

だって、まだ忘れてないもの。まだ、会いたいんだもの。
だから、おんなじかっこのシルエットのRちゃんに、腹が立っちゃうの。
可哀想だよね。最近ようやく、遠くからでもRちゃんだってわかるようになったけど。

そこで、替え歌
山口 百恵さんのイミテーションゴールドのだよ。


散歩の後の 雨のしずくを
乾いたタオルで 拭き取りながら

彼が道で話しかけるわ
流れる雲さえ 季節の色だと
私は軽いめまいを感じ
すり減った爪かざしてみるの
ガゥ・ガゥ・ガゥ イミテーション・ゴールド
ガゥ・ガゥ・ガゥ きゃしゃな姿が
ガゥ・ガゥ・ガゥ イミテーション・ゴールド
若いと思う 今度の犬よ
声が違う 年が違う 夢が違う
もようが違う
ごめんね 先代の犬と また比べている

西日の強い 公園の片隅
彼が柵を ひらりとこえる
蛇口のままの お水を飲んで
身軽な動作で すすめてくれるわ
ガゥ・ガゥ・ガゥ イミテーション・ゴールド
ガゥ・ガゥ・ガゥ 犬種そのまま
ガゥ・ガゥ・ガゥ イミテーション・ゴールド
飲み干したけど 今度の犬よ
くせが違う 汗が違う 愛が違う
きき足違う
ごめんね 先代の犬と まだ縛られてる

ガゥ・ガゥ・ガゥ イミテーション・ゴールド
ガゥ・ガゥ・ガゥ その気の弱さで
ガゥ・ガゥ・ガゥ イミテーション・ゴールド
待ってて欲しい 今度の犬よ
日が当たれば 影が違う 色が違う
光が変わる
ごめんね 先代の犬を 忘れるその日を

おそまつ

 

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