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お宅の犬 (その一) 犬が飼えるよ     2003/08/12

 マオちゃんちで、恭子さんの日記で、マオちゃんが来ることになったきっかけや、
来た直後の話を読んで、だっちゃんの時の事も色々思い出したんだって。
最初は日記のレスで書こうとしたけど、日記のレスとするにはあまりに長くて纏まらないし、
せっかく思い出したついでに、こっちに書いておこうって。
もう、はるか昔の事で、何かのきっかけがあると、そういえば、って思い出すけど、
普段は、都合のいいことしか覚えてないものね。



 ひょんな事から、一戸建てに引っ越す話が出た時、親分は、絶対イヤだった。
なんでかって言ったら、昔、一戸建てに住んでいた時、草むしりにうんざりしたから。
ちょっと気を許すと、ぼうぼうに伸びて、隣近所の顰蹙を買っていた記憶が
蘇ったようだ。
もともと、植木だの花だのには、興味も無いし、庭いじりなんか思いもよらない。
そんな人間にとって、一戸建てはただただ苦痛が多い。
それより、便利な街中で、暮らした方がいいじゃないかって。

そこへ、悪魔のささやきが耳に入ったんだって。

「一戸建てなら犬が飼えるよ。」

大きな犬が大好き、いつもそばに大きな犬が寝そべっている光景に、憧れていた親分は、
つい、力強く首を縦に振ってしまったそうだ。



お宅の犬 (その二) さて犬種は?

 それより、8年くらい前、散歩中の秋田犬に出会った事があった。
白の1歳の牡の秋田犬。
親分と目が合ったとたんに飛びつかれて、抱き留めたら、顔をなめ回されたんだって。
大きくて、それはそれは可愛くて可愛くて。
世の中にこんな可愛い犬がいたのか、と思うほど可愛かったんだって。
その時、「絶対にいつか秋田犬を飼う!」と思ったって。

だから、秋田犬を飼うのは絶対だったけど、秋田犬の世間一般の印象では
はたして、犬初心者に飼えるのか?という疑問もあった。

昔から、犬の本を見つけると、つい買っていたけど、本を見ると、他の大型犬に比べて
大変そうなのは確かだね。
そこで、大親分がまた一言。

「大きくたって小さくたって、犬は犬なんだから、可愛がってやればいいだけだ。」
「それはそうだね。」

で、あっさり決まった。

でも、だっちゃんは思うんだけど、同じ大型犬でも、ボルゾイや、アフガンなんて、
繊細な性格の犬種にしなくて良かったよ。
こんながさつな性格の人たちだと、可愛そうだよね。
やっぱり無意識に、性格が犬種を選んだとしか思えないね。



お宅の犬 (その三) 赤牝お願いします

 牡か牝かどちらを選ぶかも問題だね。
本当は、大きな牡も魅力だったんだけど、やっぱり毎日の事も考えると
ここはやっぱり飼いやすい牝に決めようという事になったそうだ。

うちの人間の常として、親分は色々夢を語る。大親分が動く。というパターンが多い。
親分は、熱中するだけして、投げ出す事が多いので、今回もまたそうなる所だった。
それに、親分としては、ただでさえ田舎に引っ込んだのに、これで犬が来たら、
完璧に外に出歩けなくなる、というのがあって、なかなかふんぎりがつかなかったのだ。

そこで、大親分が動いた。

「赤のメスの子犬をお願いします。」

て、お願いしたんだって。
ちょっと前なら、いっぱいいたんだけど、今はいないから、しばらく待って欲しいと言われた。
待ってる間に、色々必要な物の用意をすれば良かったけど、
いつも行き当たりばったりの人たちは、まだ当分先だろうと、何もしなかった。



お宅の犬 (その四) 明日朝6時に

 それからすぐの土曜日の夕方に、電話が来た。

「お宅の犬を連れて来てるから、明日朝6時においで。」

えっ!?うちの犬!?
もう、決まってるの?!
しかも、明日朝6時?!夕方の間違いじゃないの?!

驚きで固まった。
普通、何件か見に行って、気に入った子犬を選ぶんじゃ。。。?
「正しい子犬の選び方」、なんてのは、どっかに飛んで行ってしまった。
もう、うちの犬は決まってるの?
配給なの?

呆然としつつも、色々の想いが頭を駆けめぐったそうだが、
取りあえず、出かける事になった。

まあ、見るだけ見に行こう。
秋田の子犬を見るのは初めてだから、見てみたいし、
見て気に入らなければ、断ればいいんだし。。。。断れるのか?。。。

朝6時に現地に行くには、5時には出なければいけない。
その前の支度の時間を入れたら、4時か4時半には起きねば。。。
いつも寝るのが、2時、3時の生活、はたして朝4時に起きれるのか?

これからの生活を暗示するかのように、不安な展開だったそうだ。



お宅の犬 (その五) ふにゃふにゃ

 眠い目をこすり、寝床を這い出し、車を飛ばして行った。
こんな時間に寝る事はあっても、起きる事はめったにある事じゃない。
朝の空気は気持ち良かったけど、どことなく不穏な気配がするのは
寝不足からくる気のせいだよね。
たどりついたお宅は、秋保の偉い人のお宅だったそうだ。

手土産のお酒を差し出したら、お酒は飲まないとか。。。
2,3,年前までうちの人間は、お酒を飲めないわけじゃなかったけど、飲まなかったので、
実はうちも飲まないなんて話しになったら、

「犬を飼ってたら、酒、飲んでられない、飲まないのはいいことだ。」って。

そんで、

「では、まずお宅の犬を見てくれ。」

やっぱり配給なのか。。。
もし、気に入らなかったら、なんて言って断ればいいのだろう。。。

戸を開けたら、中にはケージが一つ。
人の気配に喜んだ子犬が、ケージの中に立ち上がってしっぽふりふり、全身で喜んでいた。
ケージから出されると、ふにゃふにゃとした足取りで、庭の隅に走り、朝の用足し。

「こいつは強いよ。昨日の晩に連れて来たけど、夜一度も泣かなかったよ」
「楽しみだよ。」って。

子犬を一目見たその時から、取りあえず見るだけ、だの、気に入らなければ断っても、
だのという言葉は、綺麗さっぱり頭から消えていたそうだ。
子犬は可愛いに決まってるものね。

一旦、子犬をケージに戻して、飼い方についての注意を聞いた。

「繋いで飼わないように。庭にしっかりした犬舎を用意して中にいれればいいから、
犬舎が必要なら、口を利くし。」
家の中で飼うと決めていたけど、そういう雰囲気ではなかったので、
ただ、「はい」と言った。
食事は、葱以外はなんでも食べさせていいけど、人間の残り物をやる時は、
塩分、脂を取り除いてやること。
すぐ大きくなるから、小さいうちにしっかり躾ける事。
色々聞いたけど、さっき見た子犬の事で頭が一杯で、半分も覚えていないとか。

そのあと近くで、何頭も飼ってる家があるから見に行かないか?
という事で、連れて行って貰った。
そこは、大きな大きな立派な牡と、牝が何頭かいた。
みんな一斉に吠えて、迫力。(日曜の朝早くに近所迷惑じゃないのかな。)
牡を出して見せてくれたけど、大きかった。
大きくて迫力なのに可愛い顔で、思わず、大親分が手を出そうとしたら、

「噛まれるよ。」「俺も噛まれる。」

あんたは飼い主じゃないの?!威張って、言うこと?
カルチャーショック。。。
なんでも、賞をいっぱい取った立派な犬で、高い値段で手に入れたばかりだそうな。。。

うちの人間を、秋田犬にどっぷりはまらせようという、魂胆なんだろうか?
それとも、みんな同じようにされるのだろうか?



お宅の犬 (その七) 泥縄

 その後、「コクシジウムの虫下しだけは飲ませるから、あれは怖いから」と言われた。
そして、おみやげに犬用おやつと、猫缶(マルハの金冠、これをご飯に混ぜてやりなって)
色々お土産を貰って、いよいよ、子犬を抱っこして帰って来たそうだ。

さて、帰ってきたはいいけど、子犬をどこに置く?
外で用を足した後、玄関から入ると、靴箱の下の隙間に潜り込んでしまった。
ひっぱり出そうとすると、ガウガウ言う。

かまわず引っ張り出して家の中へ連れて行っても、隙あらば、玄関に行って、
下駄箱の下に潜り込む。これは困る。
まず、居場所を作るか。

取りあえず、ペットショップに行って、ケージを買おう。
ということになり、うろ覚えの場所を車で走り回った。
当時は、まだ大型犬ブームもそれほどじゃ無くて、大きなケージを売っている所は
少なかった。ようやく見つけたケージ、90×60×60 16800円。

最初入れられた時は、短い方で縦になって寝れたんだよ。
しかし、こんな中にいつまで入れるんだ。
あまりにちゃちなケージに不安。
中が暗くなるように、ケージにバスタオルや新聞をかけて、
嵐のような、一日が暮れたのだった。

一日、子犬につきあって、何一つ思い通りになる事は無かったけど、
思い通りどころか、腹が立つことばかりだったけど、
寝顔を見てると、やけに可愛いから、ま、いいか。って。


3ヶ月くらいの頃
公園デビューして少し楽になったけど
家でもまだ遊んでやっていた。

遊んでやるのも疲れると
繋がれて一人で遊んでいた。


お宅の犬 (その七) やっぱりうちの犬


 最初は、動きがふにゃふにゃして、お座りもちゃんと出来ない程小さかったけど、
動くぬいぐるみみたいなもんだったけど。
庭で遊びまくるうちに、足腰がしっかりして、あっという間に犬らしくなった。
それと同時に、性格もはっきりしてきた。

やたら気が強くて、打たれ強い、可愛げが無い、甘えない、好奇心は旺盛

本の「子犬のしかり方」なんて、何の役にもたたない。
口吻を掴んでも、ヒーとも言わない。
何か物を投げて大きな音をさせて吃驚させる、なんてのも、
ぜんぜん、吃驚しない。しないどころか、新しい遊びかと、喜んで飛びついて来る。
お尻を叩いても、ケロッとしてる。
体を押さえて強く怒ると、反抗的な態度になる。
ひっくり返せば目一杯暴れる。
ブラシはまだ必要ないけど、馴れさせるために真似事程度にブラシをかけたら、
噛みつく、唸る、暴れる。
とにかく、人の手に拘束されるのが嫌い。

「誉めて育てる」なんて言っても、誉めるような事が全くない。

なんとか誉める所を探したら、あったよ。
寝てる時。
ご飯を残さず食べた時。
外に連れ出した時に、用を足した時。

でも、うちの人間は、こんな人達だから、
繊細な性格の子や、臆病な子だと、ビクビク萎縮して、上手く行かなかったと思う。
のんびりおおらかな性格でも、「ぐずぐずしない!」って、ひきづられて傷ついたんじゃないかな。
だっちゃんの性格だから、良かったんじゃないかな。
怒られても、「なにおー!」って向かっていくような性格だから良かったと思うよ。
優等生タイプもつまらないなんて、贅沢言うしね。
上手いこと、ぴったり合ったんじゃないかと思うんだ。

それに好奇心旺盛なとこも、うちの人たちにはぴったりだった。
だっちゃんが何かやらかす度に、面白がってくれるからね。
そういう事も、ダメっていう人も多いでしょう?

だんだん、気持ちが通じ合って、お互いに必要な存在になって・・・・・・

やっぱり、「お宅の犬」は、正しかった。やっぱり、「家の犬」、だったね。

って、うちの人間はいつも言ってるんだ。


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